地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


地域おこし協力隊の可能性

様々なことが言われる地域おこし協力隊ですが、地域おこし協力隊とはそもそもどんな仕事で、どのような可能性を秘めているのか。また、その実態はどうなのか。これからの社会を担う多くの若者が挑戦している地域おこし協力隊。その実態と可能性をお伝えしたく、私は地域おこし協力隊の調査を始めました。

本サイトは、これまでに私が協力隊の皆さんや受け入れ自治体の職員の皆さんに直接お会いし取材させて頂いた内容および地域おこし協力隊の皆さんを対象に行ったアンケート調査の結果を踏まえ、地域おこし協力隊の実態および先進的な事例をご紹介するサイトです。



第一回目として、調査を通して私が感じた地域おこし協力隊の可能性についてご紹介したいと思います。

取り巻く環境

右肩上がりの経済成長の時代が終わり、長らく横ばいの経済成長期の真っ只中にいる日本。

同時に急速なグローバル化と情報技術の発達により競争は激しくなり、時間の流れはそのスピードを増すばかり。

そんな状況下で競争に勝っていくには標準化された製品を大量生産していくのではなく、多様化するニーズに迅速かつタイムリーに応えていくべく差別化された商品・サービスを提供していくことが求められるのではないでしょうか。

田舎に眠る資源

それを実現する方法はいくつかあると思いますが、まず最初にすべきことはすでにそこに存在している資源を有効活用ではないでしょうか。

そして、そこにこそ日本の田舎の可能性があると言え、だからこそ今現在多くの方々が地方創生や地域活性化、地域おこしなどの名前で活動をしているのではないでしょうか。

つまり、すでにそこに存在しているもの、差別化できるものという視点で日本の田舎を見ていくとそこには日本にしかない「日本らしさ」がたくさん詰まっており、多くの方々がそこに大いなる可能性を感じているのです。

それは長く外国から侵攻がなく日本独自の文化が育まれたという歴史やその要因となった地理的特性からくる強みであり、その強みを活かすということでもあると思います。


それは、住環境や祭りや神社を中心とした地域文化など生活様式そのものであったり、狭い土地における高低差が生み出す独自の自然環境であったり、そこで取れる作物やそこに住まう生き物かもしれません。


いずれにせよ便利さを追求し画一化された都市部にはない独自の資源を多く秘めているのが日本の田舎であり、地方の町村ではないかと思います。

一方で経済成長には当然投資という意味でのお金が必要になりますが、都道府県を含む地方自治体の予算を全て合わせれば100兆円、市町村分だけでも50兆円を超えています。

もちろん高齢化社会への備えとして福祉などの行政サービスの整備も必要ですが、マクロに見ればこの50兆円なり100兆円のお金の一部でも地方の町村の経済成長にうまく活かせれば強力な成長エンジンになるのではないでしょうか。


もちろん、そのお金を有効に使うためには、合理的な投資対効果の測定を行う仕組みの導入が求められ、合理的な判断により行政機関として付加価値を提供できないものについては捨てることや現在および将来を踏まえ新たに顕在化してきたニーズをきちんと見極める必要があるだけでなく、業務や工程単位で優先順位付けを明確にしたり効率的な仕組みを導入するなど継続的な改善が求められることはいうまでもなく、一般企業の利益のような明確な成果指標がない行政機関に対して動機付けを行うには新たな評価の仕組みも求められるのかもしれません。

田舎に足りないもの

つまり、日本の田舎には、「資源」と「お金」があるのです。

では、一体何が足りないのでしょうか?

それは、そこにある「美しいもの」を美しいと感じたり、「美味しいもの」を美味しいと感じることができる人材がいないことではないでしょうか。

そして、その「美しいもの」や「美味しいもの」という「資源」を「価値」に変えるために「お金」を上手に使える人材がいないのではないでしょうか。

どんなに素晴らしいものを持っていても、それを素晴らしいと感じる人がおり、それを自分以外の人々に情熱を持って伝えたいと思う人がいなければまさに原石のままで「価値」にはならずまさに「宝の持ち腐れ」です。


でも、考えてみれば当たり前ですよね。

地方の町村では、小学校や中学校はあっても高校はなく、地方の町村で育った子供達がさらなる教育機会を得るためにはそこを離れるという選択肢しか取り得ず、若い人材が流出しているという現実があります。

また、仮に高校や大学がある地域であっても20代前半の若者がワクワクするような挑戦ができる就業機会、話していてワクワクするような仕事をする人生の先輩が地方の町村ではなかなか見つけることができず、ワクワクするような機会を得るため都市部に出る若者を止めることは誰にもできないでしょう。

さらに子供への教育機会のことを考えると家族ごと都市部に引っ越す人がいてもおかしくなく、その結果、必然的に地方の町村には高校生くらいの年齢から子育て世代である30代、40代という働き盛り世代までがごっそり抜けることになり、地方の町村に存在する様々な資源を活かし、新たな価値を生み出すことができる人材が決定的に欠如するという現状につながっていると考えられます。


また、そうやって人口規模が小さくなればなるほど、労働力を期待する企業の参入は減少し、さらにその地域のマーケット規模が縮小することで小売店なども撤退していき、地域としての雇用力も減少することから、ますます就業機会が減少し人が離れていき、入ってこなくなるという悪循環になっていると考えられます。

さらに現在のようにすでに人が離れてしまい、極度に人の数が減り、人口のバランスが崩れている状況でもう一つ起きる問題は、「新しい価値の創造機会」の欠如ではないでしょうか。

人口バランスが崩れたことにより新しい価値創出の源泉となる様々な年齢層・家族環境を背景に生まれる多様性が極端に減少するだけでなく、人口減少により新しい価値を創出するためにそれなりに必要となるマンパワーが欠如していると考えられます。

そして、この「新しい価値創出機会の欠如」こそ、若い世代が「つまらない」と感じる要因であり、田舎から人が去っていく主要因ではないかとも考えられます。



地域おこし協力隊の可能性

地域おこし協力隊制度は、いわゆる都市圏から田舎へ人を移住させるための制度ですが、個人的には上記のような現状を大きく変える大いなる可能性を感じています。

それが、地域おこし協力隊の皆さんを対象にアンケートを実施したり、実際に地域おこし協力隊や受け入れ自治体のみなさんのところに伺い、お話しをお聞きしてきた理由でもあります。


では、その可能性とはなんなのか。

地域の中核人材としての可能性

ひとつには、上述したように「美しいもの」を「美しい」と感じることができる人材、その「美しいもの」という「資源」を「価値」として外部に伝えることができる人材としての可能性です。

それは「よそもの」の意見というだけではなく、その地域に住み、地域住民と同じ空気を吸い、同じ土を触っている「地域おこし協力隊」という人材だからこそできることだと思います。

さらに、高齢化が進み日常生活の多くのシーンで若い力が求められている地域における中核人材として高齢者の生活サポートや地域活動への参加などにより地域コミュニティーの再構築を行うだけでなく、地域に眠る「資源」そのものを発掘し「価値」へと変えていくための様々な活動を進めていくという大いなる可能性を秘めていると思います。

挑戦機会の提供

また、地域おこし協力隊を新たな「雇用機会」・「挑戦機会」と捉えることもできると思います。

グローバル化により競争が厳しくなったことや商品・サービスがコモディティー化したため料金的な差別化が難しくなったこともあり、薄利多売の商売が増え、そのためコスト削減のため非正規雇用が増加し続けている現状があります。

その非正規雇用社員の中には、安い賃金と将来の保証もない状態で自己成長に繋がる挑戦機会が少ないルーチンワークをこなす毎日を過ごしている方も多いのではないでしょうか。

そんな自己成長に繋がる挑戦機会の少ない厳しい現実社会において地域おこし協力隊という仕事は、一つの「雇用機会」であるだけでなく、地域おこしという大きな「挑戦機会」が得られる仕事と言えるのではないでしょうか。

人口バランスを整えることから生まれる多様性

地域の中核人材としての可能性を秘めた地域おこし協力隊ですが、マクロな視点で見てみると比較的年齢層が低く、20代30代が多い地域おこし協力隊が田舎に移住することで高齢者に偏っていた人口のバランスが整えられます。

その結果、様々な年齢層・家族構成の住民が増え、地域の多様性が促進されるだけでなく新しいライフスタイルや文化が生まれます。

そして、その多様性やライフスタイル、文化が新たな価値を生み出し、その価値が人を惹きつけ、そこで育った若い世代の中にその地域に残りたいと考える人も増えるかもしれません。

同時に地域外の人を惹きつけるという理想的な移住定住促進策となる可能性も秘めていると思います。

画期的な制度

地域おこし協力隊は制度としても今までにない画期的な制度ではないかと思います。

それは、地方自治体や国のこれまでの雇用政策・産業振興政策と言えば職業訓練コースの提供や経済界への強制力のない提言、企業誘致などにとどまっていた印象がありますが、地域おこし協力隊制度は、実際に地域に雇用機会を生み出すだけではなく、産業振興の担い手を育てる機会を提供しており、これまでにない画期的な制度ではないかと思います。

そして、何より公平公正を過剰に意識してきた結果、特定個人の利得となるような施策に対しては慎重だった地方自治体が「我こそは!」と手を挙げた個人に対して報酬と挑戦機会という利得を提供する地域おこし協力隊制度は今までにない踏み込んだ制度と考えられるのではないでしょうか。

だからこそ、実際に現場で活躍している地域おこし協力隊の皆さんは地域住民のやっかみや言われなき誹謗中傷に苦しむことも多いのですが、その辺りの実態については追い追いお伝えできればと思います。



このように大いなる可能性を秘めている地域おこし協力隊制度ですが、今回の調査を通して見えてきた実態は決して良いことばかりではなく、協力隊および受け入れ自治体の職員の皆さん共に様々な困難に直面していることが分かってきました。

同時にまだまだ少なく一部ですが中には制度の目的を踏まえ、特徴を活かし、先進的な地域おこしを行っている地域もありました。

今後その実態についてをアンケートや取材を通して得た生の声を踏まえてお伝えしていきたいと思いますが、次回はまず制度や現在の市町村の導入状況などの基本的なことについてご紹介したいと思います。

皆さんの意見を聞かせください

地域おこし協力隊制度はまだまだ発展途上であり、事例やノウハウの共有が必須になります。
皆さんのご意見・ご感想などなんでも結構です。多くのコメントをいただき、本サイトが地域おこし協力隊のノウハウ蓄積・事例共有の場の一つになれば幸いです。